センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

家族という幻想

夫と結婚を決めたとき



上司から聞いた飲酒の問題は


実は 実家でも問題になっていた。




私たちと食事をするときには


夫は絶対にビールを口にしなかった。


飲酒の問題など寝耳に水だったのだ。




それでも 結婚を進めたのは


夫の家族が ほのぼのと仲良さげで


好感を持てたからだった。



そこに 義父の姿がないことは


とても不思議ではあったけれど。





義父が入院したとき



義母が付き添いを嫌がるほど


二人の関係は悪化していて



その義父の見舞いを嫌がるほど


義姉は義父を嫌っていた。




義兄もまた 義父母が嫌いだった。




義父母は常に義兄を下に見ていて


面倒なことは いつも義兄に押し付けた。




それでも 義兄は


義姉が放棄した付き添いをしていたが




その間に スナックに遊びに行く義姉を


止めることはできなかった。




義兄は夫を義父母が甘やかすことを


苦々しく思っていたし


そんな義兄を夫は嫌いだった。




入院期間が伸びていくと


この家族はますますバラバラになった。




義姉に頼る義母は


義姉からお金を無心されていて



いっしょに買い物に出かけると


その精算も全て義母持ちで



それを夫にこぼしていた。




義姉に注意をすると


義母とも夫とも溝が入った。





ひとりで居られない、という義母のために


夫は義母といっしょに暮らすことにした。



義父が退院してからも。






本当は


飲酒に目を光らす私のことが


うっとうしかったのだ。




義母は 何本ビールを空けようが


ニコニコと見守ってくれる。



義母もまた 



義父と二人の暮らしが嫌だった。


可愛い息子と二人で暮らしたかったのだ。




ずっと前に


ローンの送金が止められたのは




そんな義母の複雑な気持ちが


抑えられなかったからかも知れない。





夫は週末にしか戻らず



仕事と幼い子どもの世話とで


私は精神的に追い詰められていたが



そんなことは 彼にはどうでも良かった。







私が見ていた、ほのぼのと仲よさげな


あの家族は何だったのだろう。





今、荒んだ生活をする夫は



皆に嫌われた義父にそっくりだ。




温かい家族が欲しかった夫は



自分が好きなように生きても



無条件に漏れなくついてくるものだと



何の疑いもしなかった。




   それは幻想だよ




   と、誰の言葉なら



  彼の胸に届いたのだろうか。