センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 優しげな差別


突然、緊急ミーティングをする、と


オーナーからLINEが来た。



何事?


先週、ミーティングやったばかりだけど…



まぁ、また例のクレーム大騒ぎ案だろうな、


とは思ったけれど…



本当にそのものズバリで、


またもや、ルール破りで嘘ばっかりつく子が


他の子に対して、やらかしてくれたわけで…



子どもだって意地悪するよ、人間だものಠ⁠_⁠ಠ



ルール破りで嘘ばっかりつくその女の子は


養子である。


そういう例はそんなに珍しいことでもない。



そして、その女の子は


見た目がはっきり一般的な日本人と違う。


それもまた珍しいことではない。



彼女の生い立ちも、見た目も


保育においては一切関係ないと思うが



彼女がやらかすあれこれは


他の子どもの保護者には看過できないらしく


かなり強めのクレームに繋がる。



しかし、彼女はとてもタフで賢く、



どんなに注意されても、立派に言い返すし


大人の目を盗んでやらかすことが得意だ。


なかなかのツッパリちゃんである。



ややこしいのは、


「被害者」の女の子もまた、


なかなかのグレーゾーンであることなのだ。



学力に問題はないが、


コミュニケーションに遅れが目立つ。



いつもひとりでブツブツ言いながら


人形で遊んでいるので、ツッパリちゃんには


少し奇異に映るらしい。



このツッパリちゃんはとても賢いので



この「被害者」の女の子とか


発達障害のオレオレくんとか


宿題やらないおかっぱちゃんとか



ちょっと成長がゆっくりな子どもを


自分の仲間に入れることが得意だ。



そして、都合良く自分の「パシリ」にして


時にはストレス解消に使ったりする。



「パシリ」団は、都合良く使われて


時に都合良くいじめられる。


まだ、疑う心が育っていないからだ。



そりゃあ保護者にとっては腹立たしい。



それでも、ツッパリちゃんには魅力があり、


「パシリ」にされようが、意地悪されようが


彼らはいっしょに遊びたいのだ。



で、ミーティングである。


強いクレームが来ている以上、


放置しておくわけにはいかない。



とりあえず、彼女たちを離して、


別室で保育することになったのだが



その話の中で、彼女の生い立ちが


問題の背景にあるのではないか、という


オーナーの見解が入る。



皆、それに頷くけれど


なんだかそういう方向で語られるのは


私には違和感がある。



彼女が「可哀想な子ども」だという見方は


彼女に心を寄せているように見えて


実は差別なんじゃないかと思う。



誰かを排除したり、辛く当たったり


それだけが差別だと思われがちだけれど



こういう優しげな姿をした差別もある、と


私は思う。



私もそんな優しげな差別で


きっと誰かを傷つけてきた。





夫が亡くなって2年が経つが


年賀状のやり取りなど必要ないほど


近くにいる友だちには



その事実を告げずに過ごしてきた。



ある日、「大変なことがあったと聞いた」


というLINEがその友だちから届く。



昨年、喪中はがきを送った隣町の友人が


私の住む近くにいる親戚にそれを話し、


それが最近、友だちに伝わったのだった。



聞かれれば話すつもりではいたけれど


永遠に話さないでいられるのなら、


そういう選択をしたかった。



私の友だちはきっと、


そこにわだかまりがあるだろう。


こんなに近くにいるのに何故?と…



ずっと、いろんなことを話し合ってきたのに


どうして?と…



話したくない私の気持ちは


彼女には理解できないだろう。


私にだってよくわからない。



悲しいとか辛いとか、そんな気持ちではなく


ただ、私には痛い。


痛くて、ヒリヒリして、さわれない。



だから、誰にも触れて欲しくない。



そこに、ほんの少しでも好奇の色が見えたら


そこに耐える自信がない。


そういう色を見たくない。



人の気持ちなんて


容易く理解できるものじゃない。


自分の気持ちもわからない。



「可哀想に」とか「気の毒に」とか


それが誰かの心を刺すことだってある。



私は、ツッパリちゃんの生い立ちが、とか


見た目が違う大変さ、とか



そういう優しげな差別と


「夫を亡くした大変さを抱えた人」という


私への思いやりという気持ちは



根っこがいっしょなのではないか、と


密かに思っている。



だから、


夫が亡くなってることを知ったとき、



「呪い殺したの?」とありえない非常識な


言葉を返したマスオさんに


心底ホッとしたのだと思う。



心を寄せて欲しいわけじゃないんだ。


普通に、変わらずにいてくれることが


救いになることだってあるんだよ。



天邪鬼でごめん。


でも、これが私だから。



いつか、友だちに笑って話せる日が


来るのも知れない。



でも今は、ごめん。



負けず嫌いのツッパリちゃんは、


実はちょっと自分に自信がない。


弱いからこそ、ツッパるんだよね。



天邪鬼なところは


私と似ているかも知れないな、と思う。



いつも立派に大人に挑んでくる、


超超強気なツッパリちゃんと


私も負けずに闘おうと思う休日なのだ(⁠ ͝⁠°⁠ ͜⁠ʖ͡⁠°⁠)⁠ᕤ




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