センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 使えるものなら尻尾まで


「ちょっと待って、ちょっと待って」



これが仕事中の私の口ぐせ。



「塗り絵、コピーして〜」

 

「算数、丸つけて〜」


「水筒の紐が取れちゃった〜」



1年生のお猿ちゃんたちが


次から次へとやって来る。



「ねぇ、まだ〜?


「早く〜!



あ〜、ごめん!


ちょっと待って〜!



後からやって来る子どもたちに


検温もしなければならないし



ロッカーにランドセルをしまわない子どもに


ちゃんとしまわせなければならないし



水筒のお茶はこぼすは、


ボールをガラスにぶつけるは…



あっちで誰かがもめている。


こっちで誰かが泣いている。



「ね〜、早く〜!」



ごめん、ごめん、ちょっと待って〜!



お局様は まだまだね〜、とばかりに


子どもに振り回されてる、と笑う。



どーせーちゅうねん(⁠╯⁠°⁠□⁠°⁠)⁠╯⁠︵⁠ ⁠┻⁠━⁠┻



自分のお気に入りの子どもばかり見てないで


自分のやりたいことばかりにこだわらないで



協力しようって気がないのかい?






足りない、足りない。人が足りない。



尻尾がついていれば


尻尾まで使いたい忙しさなのだ。



人間が同時に処理できる情報量なんて


たかが知れてる。


聖徳太子じゃないんだからさ。




尻尾があれば


こぼれたお茶くらい拭けるかな?



尻尾があれば


お局様の前で しっしっと振れるかな?



使えるものなら尻尾まで



今日も私は


見えない尻尾を振りながら働くのである。