センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 引き受けるべきこと


せっかくの夏休みだが私はなんだか忙しい。



休みの間に健康診断や検査を済ませたくて


毎日、あちこち病院通いだ。



今朝は 憂鬱な胃カメラの検査。


朝イチの予約を入れたので、8時に家を出た。



もう4回目になる胃カメラの検査だが


毎回ドキドキ緊張してしまう。



麻酔薬の入った氷を舐めて


その後 舌が痺れ 喉が固くなり


緊張感が増していく。



ここから検査までの待ち時間が


ものすごく長く感じる。



私の次の人は鼻からの検査を選択していた。


私も前に迷ったのだが



担当医は 


見る側としては、口からの方が見やすい、と


言っていたので、そちらを選択した。



鼻からだろうが 口からだろうが


同じ気道を通ることに変わりはなく



喉を通るときが1番きついので


そこはもう諦めるしかない。



毎回、同じ先生が担当なので


それだけで とても安心できる。



この先生は 毎回実況中継をしてくれる。



「食道はとてもきれいですね。」


「胃も2年前と同じですね。ちょっと赤くなって 炎症を起こしてる所があるけど 治療の必要がないレベルです。全体にきれいだと思います。」



自分が見ることのできない、


食道や胃でさえも 褒められると嬉しい。





空気を入れて脹らんだ胃の中で


カメラがモゴモゴと動くのは


気持ちのいいものではないが



先生の落ち着いた実況中継の声は


安心感を与えてくれる。




終わってしまえば あっという間で


この短い検査のために


ずっと前から憂鬱になるのが 不思議だ。



医師にアンケートを取ると



自分が検査を受けるときに


バリウムを飲む検査を取るか



胃カメラの検査を取るか では


圧倒的に胃カメラの選択が多い。



バリウムの検査で引っかかれば


どちみち2次検査は胃カメラだ。



私は バリウムの検査で引っかかって


2次検査を受けたことがあるが


2次検査までの不安は半端ない。



名前は忘れたけれど


胃の粘膜の裏側にできる腫瘍のようなもので



癌ではないんだけどね、と


1次検査の医師から言われた。



癌ではないのならいいか と思ったが


家で調べたら、手術のできない病だった。



癌より たちが悪いではないか!


と ものすごく不安になった。


結果は 異常なし だったのだけれど。




だから


その場で実況中継してもらえるのは


とてもありがたい。




とりあえず


連帯保証人の件が解決するまでは


生きていなければならない。





敵対的関係になってしまったのは


弁護士が 依頼人の利益を守ることに


重点をおいたからだろう。



会社側は 


私に等分に債務を負って欲しいのだ。


私も それは承知している。



今すぐにでも 会社が解散するのなら


私も等分に債務を負うのはあたりまえだが



会社は存続し 債務は減っていくのに


等分に支払う金額を決めてしまうのは


おかしい、と弁護士は言うのだ。




私も 少し引っかかってはいる。




もしものときには 債務を負うと話したら


次の話し合いでは



今現在の債務で等分にするのではなく


夫の死亡時の債務で等分に、と言うのだ。



等分にする金額も 当初より増えていく。


財務状況も 会社の現状もわからない私に


払えるだけ払わせたい、ということなのか。



連帯保証人の件も


こちらから問い合わせるまで


教えてはもらえなかった。



公的な書類を整えて


自分で金融機関に問い合わせて


やっと詳細がわかったのだ。



大きな債務を背負うのだから


可能な限りリスクを減らしたいのはわかる。



けれど


連帯保証人の書類を1枚、それも


こちらからお願いして初めて渡されて



債務だけは等分に というのは


あまりにも 足元を見た扱いではないか。



そこに 突然現れた夫への貸付金である。



敵対する気などないが


債務だって 負担すべきものは負担するが



見えてきたものが あまりに露骨過ぎて


私ひとりでは 対応できない。


弁護士は必要なのだ。



おそらく 会社の経営について


充分に理解できていない相手方のためにも。




私の虚しさは 自分で引き受けるしかない。


けれど


夫と社長は 学生時代からの友人なのだ。