センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

「ありがとう」が動かすもの

まだ、20代の頃、


近くの横断歩道で車が止まるのを待っていた。


すぐに1台の車が止まってくれて、

私は頭を下げながら、そこを渡った。


すると、渡った先にいた近所のおばちゃんが


「若いっていいね〜、私らなんか車は止まってくれんよ。」


と笑った。





時は過ぎ、


私はあの頃のおばちゃんと同じくらいの歳になった。


あの時と同じ横断歩道で待っていても、

すぐには車は止まらない。


私は私で、止まってくれないことに当たり前になり、


道路が混んでいるときは、止まってもらうことが申し訳なく、


少し遠くても歩道橋まで歩いたりする。





しかし


横断歩道に人が待っているときには、車は必ず止まらなければならない。


道路交通法には、ちゃんと横断歩行者妨害という罰則があるのだ。


反則金は普通車ならば9千円。違反点数は2点。

これは、赤信号無視と同じレベルだ。







私はドライバーでもある。


赤信号は無視しないが、横断歩道はどうだろう。同じ重さで考えていただろうか。





横断歩道で車が止まる率がダントツに高いのは 長野県だという。


もちろん、警察の注意喚起や啓発活動の賜物でもあるのだろうが、


これは県民性なのか、マナーの良さが大きく関与している。


長野県では、車が止まってくれると、必ず歩行者がお礼の気持ちを表すのだと言う。


子供だったら「ありがとう!」


大人だったら、お辞儀をする。


つまり、止まってくれたことへの感謝の気持ちを必ずきちんと伝えるのだ。


だからこそ、車は気持ち良く止まってくれるのだろう。







私はもう若くはないし、車が止まらなくてもイライラしない。


横断歩行者妨害を盾に怒ったりしない。


だけど


止まってくれた車には


必ずきちんと頭を下げよう。


聞こえることはないだろうが、


必ず小さく「ありがとう」を言おう。


長野県民ではないけれど


こういうことって大切だ。


人の気持ちが何かを動かす。


そんな世の中、悪くない。