センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

息子がポリスと帰って来た件

昨夜のことだ。


次男との晩ごはんを終え、テレビを見ながらブログのチェックをしていた。


長男は残業でまだ帰らない。


もうすぐ10時になろうという頃


電話が鳴った。


受話器を取ったが、何も言わない。


「もし、もし?」


何も聞こえず、いたずら電話かと受話器を下ろした。


また、少しすると電話が鳴った。


やはり何も言わない。


微かに誰かと話す男性の声が聞こえる。


やはりいたずらか…



やれ、やれ、とソファに腰掛け


再びスマホを見ていると


居間の扉が開いて、長男が現れた。


その顔を見て


さっきの電話が長男からだと悟った。


明らかに挙動不審だ。


「さっき、電話した?」


長男は少し慌てながら


「あ、うん、ちょっとね…」


と私を玄関に手招きする。


家の中だというのに、長男は声を潜め、


「ちょっと…ちょっとね。」


と繰返す。


もう、私の頭の中は不安でいっぱいだ。


  何?


        何?


              何?!


事故ったのか?どこにぶつけた?酷いのか?


 「何も悪いことはしてないよ。」


と 長男は必死に言い


      玄関のドアを開けた。






  そこにいたのは二人のポリス。


      ! ! !


私は頭の中で


   人身?人身事故なの?!


      と 絶望的に考えていた。



 「夜分にすみません。」


ポリスは申し訳なさそうに話し始めた。


「ちょっと確認なんですけど…」


内容はこういうことだ。


私の家の近くに、実家の持ち物である建物がある。


私たちは2年前までそこの一部を借りて住んでいた。


そこにはまだまだ私たちの持ち物が残されていて、倉庫にも山積みになっている。


長男は製造業で働いていて

作業着は油にまみれ、臭いを放つ。


会社に置いていた、使わない作業着が貯まり、その臭いが嫌で、とりあえずこの倉庫に保管しようと考えたのだ。


いったん家に着いた彼は


車を置いて、歩いて倉庫に向かった。


そこで、パトロールをするポリスとすれ違ったのだと言う。


田舎の寂れた場所なので


9時を過ぎれば、ほとんど人が歩かない。


そんな時間に大きなレジ袋を下げた長男は目立ったのだろう。


灯りの消えた真っ暗な建物で


倉庫の前だけは人が通ると灯りが灯る。


そこに作業着だけ置いて、ご丁寧に大きな空のレジ袋を持って出た所で


ポリスに尋ねられた。


        「何をしてたんですか?」



倉庫の鍵は紛失して持っていない。

だから鍵はかかっていなかったのだが


自分が住んでいた所だと話すと、その鍵を見せるように言われたらしい。


長男はごく普通の真面目な人間で、見た目はまったく人畜無害だ。


そして、ものすごく小心者だ。


突然にポリスに尋ねられた彼は


おそらくしどろもどろで


ポリスから見たら、何から何まで怪しかったに違いない。


そこで、電話で確認を、となったわけだ。


パニックで真っ青になった彼には


私の「もし、もし」が聞こえない。


何から話せばいいのかわからない。


私は電話を切ってしまう。


で、


近くに住むなら、直接自宅へ、となったわけだ。


事故でなくてホッとした私は事情を説明し、


「なるほど、そういうわけですか。」


とにこやかにポリスは納得し


再び「夜分にすみませんでした。」


と去って行ったのだった。


長男はしょげながら


「すんません。」と謝った。


ホントに


生きていると色々あるね。


この1週間


パンドラの箱を開けてしまったり


健診結果に青ざめたり


母もなかなか凹んだけどね。


 何事もなく、無事で良かった。


    それだけで十分だ。


私たちが家でくつろぐ時間帯も


こうしてパトロールをして、市民の安全を守ってくれる人がいる。


そんなことにも気付けた夜で


今朝も元気に息子を見送ったのだった。