センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 美しい手仕事




私には 時々マイブームがやって来る。


5年前のマイブームは着物だった。



着物と言っても 着付けとか


着物を着てお出かけ、とかではなく



古い着物や帯のリメイクにはまったのだ。



きっかけは


義母の遺したたくさんの着物だった。



しつけがついたまま、


一度も袖を通していない着物や帯も


何枚かあった。



義母は地味好みで、とても小柄だったので


この着物を着られる人がいない。


義姉も欲しがらなかった。



その中に大島紬が1枚あった。


母に見せると 作務衣にするという。



知り合いに和裁と洋裁のプロの方がいて


近所の方が作務衣を作ってもらったらしい。



その方にお願いすることにした。



とりあえず、着物を解いて


洗って 干して アイロンがけだ。



私も手伝ったのだが


これが とても楽しかった。



無心に着物を解くとストレス解消になる。



大島紬は高級品なので恐る恐る扱っていたが


手洗いして、脱水して、干しておくと


あっという間に乾く。



そして とても丈夫なのだ。



これにはまった私は


骨董市などで 大島紬を見つけては買い



自分で解いて 洗って、を楽しみ、


コートやワンピースに仕立ててもらった。




仕立ててくれた方は 当時、90代だったが、


私が見本を見せてお願いすると



腕が鳴る、とばかりに


とても素敵に仕上げてくれた。


帯で 手提げバックも作ってもらった。



私はその90代のおばあちゃんが憧れだった。



一人暮らしだったが、凛としていて


好きな和裁や洋裁を続けていた。


そして、いつも朗らかだった。



だから、今でも


そのおばあちゃんの作品は大事にしている。







日本の手仕事は本当に素晴らしい。


着物の染めも、織りも


気の遠くなるような工程だ。



そして 自分で解いてみてわかったが


上手な人が縫った着物は


解くときもするするときれいに解けるのだ。



下手な人が縫ったものは


あろうことか 見えない部分が


手縫いではなく、ミシンがけになっている。



チャコを使うべきところなのに、


鉛筆で線が引かれていたりするのだ。



プロとしての自負がある人の仕事は


見えないところでも手を抜かない。


90代のおばあちゃんみたいに。



もう着物を着ることもないだろうけれど


この美しい手仕事は


ずっと残っていって欲しいと思う。