センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

静かに祈る朝だった

青色

夢を見た。


実家のリビングに夫がいる。



素敵な絞りの着物の背中は


振り向いたら、義母だった。



義母は、私と夫の不仲は


私に責任があると非難する。



夫と向き合い、


もう、一緒には暮らせないと話し合うが


話し合いは平行線だ。



ひとりにされることに怯えて泣く夫。


また一緒に暮らすことに怯えて泣く私。



これからどうしていけばいい?



絶望的な気持ちで走り去る夫。


絶望的な気持ちで見送る私。



どうしようもないその絶望感だけが


目覚めたあともずっと消えなかった。



時間の経過は


思い出を優しくオブラートに包むけれど、



どうしようもない絶望感だけは


時を経てもリアルなままだ。



夢の中の夫は


いつだって不機嫌で、いつだって不幸だ。



この世と隔てる壁の向こうで、


どうか彼の魂が安らかでありますようにと



静かに祈る朝だった。



私たちは黄昏を歩くセンチメンタル同盟

 描いていた未来

青色


近頃、そんな言葉をよく耳にする。


「描いていた未来とは違ったけれど」…



描いていた未来ってどんな未来だろう。


私はどんな未来を描いていただろう。



若い頃は、ただただ自分に自信がなくて、


大した未来を思い描けなかった。



年老いたとき、一緒に寄り添い歩ける人と


穏やかな日々を送れたらいい。



私の夢はそんなところだった。



が、そんなに大きな夢でもなかったのに、


その夢は叶わなかった。


「描いていた未来」ではないわけだ。



「描いていた未来ではなかったけれど」


に続く言葉はおそらく肯定文だ。



それでも今が幸せで、


今の自分でいいと思える…そんなとこ。



思い描いていた未来を生きられる人は、


そう多くはないだろう。



日々を重ねる中で


折り合いをつける、という知恵を授かり、


雨も良し、晴れも良し、と思える。



そういう着地点も悪くない。



イマドキの若いもんにはわからないだろうが


描いていた未来よりも大事な今がある。



そういう今日を生きる。



描いていた未来とは違ったけれど、


それでもそんな今がいい。



私たちは黄昏を歩くセンチメンタル同盟

 イマドキの自尊心

青色


イマドキの若いもんは…


と大昔から言われているけれど。


まさか自分もそんなことを言うなんてね。



職場に若い人が入った。


若いのに落ち着いている印象だった。


人手不足にありがたい話だ。



しかし、私はなんだか嫌な予感がした。



シニア若葉マークともなると、


沢山の人に出会ってきて、


それなりに色んな経験も重ねている。



この嫌な予感は既視感と言ってもいい。



かつての職場に


この若い人とそっくりのタイプがいた。



見た目も、しっかりして落ち着いた様子も


それはよく似ていた。



頭が良くてしっかりしているが、


なかなかドライで、


おかしいことはおかしい、と言うタイプだ。



羨ましいことに、


ちゃんとNoと言える日本人なのだった。



仕事のやり方や、その振る舞いを


同僚に注意されると、


それが嫌で辞めて行った。



今度の若い人も同じだった。



今の世の中はハラスメントにうるさい。


だから、みんな気をつけてはいた。



戦力として育てようとした同僚は、


熱心に指導はしていたが、


それはあくまで指導のレベルだった。



しかし…


それは「イマドキの若いもん」には


通じなかった。



うざがられる、というレベルを越して、


「顔も見たくない」というレベルになった。


それも、一気に、である。



で、あっさりと辞めていった😓



まぁ、よくある話ではある。


あっちにもこっちにもゴロゴロ転がる話だ。



しかし、この話の残念なところは、


同僚が若いもんの資質を買っていて、


立派に育てあげたい、と願っていたことだ。



若いもんには、それが


単なる嫌がらせにしか感じられなかった。


自分は哀れな被害者だと言うのである😱



これが世代間ギャップというやつか?


同僚の落胆は言うまでもない。



私の嫌な予感も捨てたもんじゃないな、


とつまらない皮肉を自分に飛ばして、


この件は忘れることにした。



忙しい毎日は続くのだ。


イマドキの若いもんの繊細な心に寄り添う、


心の余裕などない。



だって、そもそも理解不能だし。



「まったく、イマドキの若いもんは!」



こんな使い古されて、穴があきそうな言葉を


心の中で吐き捨てて、


若いもんの穴を埋めるべく、走り回る。



若さ故の傲慢さを


私たちも持っていたからこそ、


なんだかなぁ…とため息をつくのだけれど。





私たちは黄昏を歩くセンチメンタル同盟