昨日、長男の高校時代の教科書を見つけた。
国語の教科書である。
パラパラとめくってみると、
小説や評論、古文や和歌などぎっしりで
なかなかのラインナップである。
ふと目に留まったのが、
鴨長明の「方丈記」のあの名文だ。
「ゆく河の流れは絶えずして、
しかも、もとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、
かつ消えかつ結びて、
久しくとどまるためしなし。
世の中にある、人とすみかと、
またかくのごとし。」
誰でも学生時代に一度は読んだことがある。
久しぶりにこれを読んで、
あぁ、これは私たちの世代だからこそ
胸に沁みるのだと思った。
「朝に死に、夕に生まるるならひ、
ただ水の泡にぞ似たりける。」
「仮の宿り、誰がためにか心を悩まし、
何によりてか目を喜ばしむる。」
なんて美しい文章だろう。
若い私にはわからなかった美しさだ。
うたかたの世で、
あれこれ惑い、悩み、考えるけれど、
「久しくとどまりたるためしなし。」
鴨長明が「方丈記」を書いたのは、
58歳の頃だとか…
なるほど、納得である。
齢を重ねることで見えてくるものがある。
感じることも変わる。
うたかたのひと粒は、
ゆるゆると流れていけたらいい。