センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 テストのこだわり


私が次男のテストについて思い出したのは


新聞でこんな記事を見かけたからである。



新聞社にこんな訴えが届いた。


「娘がテストで掛け算の式が逆だとして


 バツになった」



つまり、この保護者は


逆順をバツにされたことに納得がいかない、


ということなのである。



そのテスト問題はこうだ。


「車が六台あります。一台に五人乗ると


 全部で何人乗れるでしょうか」



正答は5×6=30      30人である。



その娘さんは、こう考えた。


「六台の車に一人ずつ乗せていくから六人で


 それを五回繰り返す」



だから 6×5=30 30人である。


答は同じではないか。何故バツなのだ?


ということらしい。



なるほど、低学年あるあるの話ではある。


この保護者の意見は



「何を一つ分と考えるかは、見方次第で


 変わる。一つの考え方を押しつける指導は


 多様性を重んじる今の時代に逆行して


 いませんか」





こういう考え方の保護者がいるのも


イマドキのあるあるだと思う。



発達障害の子どもの支援をしていたとき


当然、学級に入って授業を見ていた。



かけ算は2年生で習う。


先の車を使った問題は必ず出てくる問題だ。



先生は、黒板に図を描いて


丁寧に説明をする。



車の中には5人が乗っていて


その車が6台ある、という図だ。


教科書の練習問題にも出てくる。



モノがお皿に載ったみかんになったり


袋に入った飴になったりするが


考え方は同じである。



かけ算は逆順にしても答は同じだが


授業では、かけられる数とかける数を


きちんと区別することを重視する。



このテスト問題の場合、


一台に五人乗ると、とあるのだから


一台に一人ずつ乗る、はない。



そういう考え方を 低学年はしがちだから


授業できちんと教えるのである。



ベテランの先生は


子どもが混乱しないように たし算にして


計算させる。



一台に五人、それが六台。


5+5+5+5+5+5=30



たし算だとめんどくさいね。


だから5×6というかけ算にするんだね。



私はこの説明がわかりやすい、と感心した。



だから、低学年の子どもが文章題で悩むと


このたし算で計算するやり方を見せる。


これを図にすれば、さらにわかりやすい。



テストって、良い点を取るためのもの、と


考えがちだけれど



授業でやったことを 正しく理解したか


ということを確認するためのものだ。



この娘さんが、こういう理解の仕方をした、


ということは、授業で繰り返しやったことを


正しく理解していなかった可能性がある。



このテストのバツは


それに対する解答なのだと思う。



「一つの考え方を押しつける指導」とか


「多様性を重んじる今の時代に逆行してる」


とか、そういう話ではない。



そんなことを言ったら


国語なんて、さらにツッコミどころ満載だ。



作者が間違えるような「作者の気持ち」を


問う問題は、押しつけではないのか?


という話になる。



たかがテスト、されどテスト。



保護者が良い点を期待するのはわかるが


そこにこだわり過ぎていると


子どもも息苦しくなる。



バツがあってもいい。


バツがあるからいい。



そこから見えてくるものがあるのだ。



うちの次男が 私と同じように粗忽者だ、と


わかるのは、大事なことだと思うのである。