センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

「心の中の幸福のバケツ」

3年前、私は大量に本を買っていた。


コーチングとか、引き寄せとかの


啓発本からスピリチュアル本まで


読みきれないほど大量に。



どれだけメンタルが弱ってたんだ、という


ラインナップだった。




その中で


1冊の本が弱った自分の光になった。





よくある、ポジティブシンキングの


How to本だと思っていた。



興味を引いたのは


タイトルとは真逆の話から始まったからだ。






心理学博士のメイヤー博士は


朝鮮戦争後、


北朝鮮の捕虜となったアメリカ兵1000人を調査した。


アメリカ兵が収容されていた北朝鮮キャンプは、


一般的な基準からいって、


とくに劣悪でも残酷でもなかった。


肉体的な虐待は、


歴史的に見ても少ない方だった。



しかし


多くの捕虜が、この収容所で命を落とした。



原因は、マラズマス=あきらめ病だった。


絶望のどん底でかかる病だ。



北朝鮮の看守が使った究極の心理戦は


密告、自己批判、忠誠心の打破、


そして、心の支えをことごとく奪うものだった。



それにより


捕虜たちは生きる目的を失い、


生きる意欲を失い、


医学的に何の問題もなくても、


命を失った。





著者のひとりであるクリフトンは


この衝撃の事実から 逆説的に考えた。


不信や失望といったネガティブな感情で


人が壊れてしまうなら


逆に


信頼や希望といった、


ポジティブな感情を呼び起こせば


明るく、前向きに生きられるのではないか、と。



そこから生まれたのが


「バケツとひしゃくの理論」だ。






この理論は クリフトンの数々の研究により


ポジティブ心理学のベースとなった。



この本は末期癌に侵されたクリフトンの


集大成となる本だが、


それをクリフトンは孫のトム・ラスとの


共著にした。



この本がただの心理系の本でないのは


このトム・ラスの祖父への愛と尊敬が


たくさん詰まっているからだ。




そして


トム・ラス自身が 


このポジティブ理論に支えられて


前向きに生きているからだ。





トム・ラスは、17歳で左目を失明した。


そして、全身に腫瘍ができる可能性のある、


先天性のとてもめずらしい病気であると


診断された。



実際、その後の彼には


次々と新たな悪性腫瘍が見つかった。



しかし


彼は絶望しなかった。


家族や友だちが、


毎日、彼のバケツに水を注いでくれたからだ。



彼のバケツの水は決して枯れることはない。



彼はこんな風に綴る。



「この話をはじめて読んだら、


 僕ですらウソっぽいと思う。


 でも、ウソはひとつもない。


 進行性の病気で、


 腫瘍がつぎつぎできるなかで、


 あふれるバケツは文字どおり、


 僕の命を救ってくれた。」






ネガティブな感情はあっという間に伝染する。


SNSの根拠に欠ける誹謗中傷の広がり方が


顕著な例だろう。




自分のバケツの水を満たすには


誰かのバケツにひしゃくを使って


水を注ぐことから始めることだ。



この本には


巻末にドロップ型のカードがついている。


トム・ラスは


このカードを 水を注ぐための一歩として


使うことを勧めている。






誰かのバケツから水をくみ出して


自分のバケツが枯れぬよう


希望を見つける明日にしたい。