センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 赤かぶ騒動


楽しみにしていた3連休のなか日、


どうにも回復しない体調に焦りつつ


ソファで横になっていた。



もう、すっかり日が暮れた頃、


ピンポーン♪とチャイムが鳴る。



ヨロヨロとカメラを確認すると、


どこかで記憶のある女性が立っている。



玄関を出ると、その女性は困ったような顔で


「赤かぶを持って来たんですけど…」と話す。



そうか、思い出した。


兄と母の知人で、以前から冬になると


赤かぶを買って来て下さるのだ。



母は冬が近づくと、赤かぶで酢漬けを作る。


酢に美味しい蜂蜜を加えて作るその酢漬けは


近所の方にも差し上げて喜ばれていた。



その知人がそれを知り、


産直野菜を買いに行くときに


母の分も買って来て下さることになった。



もう、随分長く続いている。


しかし、母も高齢になり、認知機能も衰え、


大量の酢漬けを作る気力も失くなった。



もう、お断りしなければ、と


一昨年から言っていたのである。



しかし、それさえも忘れてしまい、


なおかつ、兄と長期の旅行に出かけている。



最悪のタイミングで我が家に届いたのだった。



ふさふさと立派な葉を付けた赤かぶが


1袋に3株入っている。


それが10袋であるヾ⁠(⁠*⁠’⁠O⁠’⁠*⁠)⁠/



か、勘弁してくれ〜.⁠·⁠´⁠¯⁠`⁠(⁠>⁠▂⁠<⁠)⁠´⁠¯⁠`⁠·⁠.



1袋120円という、申し訳ないほど安くて


新鮮な赤かぶである。



元気だったら、葉とかぶを切り分け


せっせと保存袋に入れただろう。


ひと袋分くらい、酢漬けも作れただろう。



なぜ!なぜ!なぜ!今なんだ〜ಥ⁠_⁠ಥ



とりあえず兄にラインで報告を入れ、


明朝、ご近所に配ることにした。



まずは近くで働く私の友人に届け、


次にご近所に届けた。



寝込んで筋肉の衰えた体に赤かぶは重く、


軽く腰を痛めてしまった。



3袋を残したところで、限界である。



残った力を振り絞り、


赤かぶにザクザクと包丁を入れて、


圧力鍋でスープを作ることにした。



幸い、生協から届いたベーコンがある。


美味しいスープができそうだ。



赤かぶの皮を剥きながら、


赤かぶである必要は全くないんだけどな、


と思いながら、鍋に放り込んだ。



コンソメではなく、鰹だしで作ったスープは


思いのほか美味しくできて、


食欲のない私を助けてくれた。



お昼は別鍋で雑炊にした。


あぁ、日本人で良かった•́⁠ ⁠ ⁠‿⁠ ⁠,⁠•̀



そうして、私は毎日赤かぶスープを作った。



せっかくの赤かぶの色素を活かすために


最後は酢漬けも作ろうかと思っているが



料理もまた、なかなかの力仕事なので


作っては休み、食べては休み、で


なかなか酢漬けまで辿り着けない。



良かったのか、悪かったのか


この最悪のタイミングでの赤かぶの出現を


私はきっと忘れないだろう。