センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 「壊れかけのRadio」


夫と婚約した後の、ある日のデートだった。



夫の車には


いつものようにラジオが流れていて



よく晴れた、外の様子を見ながら


ふと胸が詰まった。



ラジオから流れてきたのは


「壊れかけのRadio」だ。



好きな曲のひとつではあるけれど


特別な思い入れがあるわけでもない。



でも、その曲を聴いていたら


どうしようもなく切なく、涙がこみあげる。



外の景色に気を紛らわせながら


夫に気づかれぬように、必死に涙を止めた。





マリッジブルーと言うものだったのか


あのときの複雑な感情は忘れられない。



結婚式の日ではなく、


あのときが自分の新たな出発点で



その後に背負う様々な重さを


どこかで覚悟したときだったかも知れない。



過ぎてしまえば


ほんの一瞬だったような気もする。



夫はもういない。


私もあの日の私ではない。



それでも、この曲を聴くと


あの日の若かった自分を思い出すのである。




徳永英明 / 壊れかけのRadio