センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

そこに吸い込まれぬように

今、生きているこの世界には


普段は見えない穴がある。



その穴は


見えない人にはずっと見えない。



見える人には



予期せぬ時に現れる。







半年前、


仕事帰りの夜の駅で


突然、その穴は現れた。




私は、とても疲れていて


ぼんやりと電車を待ちながら


目の前の線路を見つめていた。




そこに突然、穴が現れて


見えない力で


吸い込まれそうになった。






私にこの世を去りたい理由はない。


まだ、やりたいこと、やれてないことが


たくさんたくさんあったし、



できることなら


90までは生きてみたいと


ずうずうしくも考えていた。



それでも



その穴が突然現れたときに


どうしようもなく吸い込まれそうになり



怖くなって


慌てて後ろに下がったのだった。







見えない穴は必ずある。



見えないけれども


必ずある。



そこに


吸い込まれぬように



泣きたいときには泣いて


疲れたときは少し休んで





どんなに弱い自分でも



抗える力を持てるように。