センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 危ない橋


「安全確保と保秘を徹底して、実現させろ。


 それができない外務省なんて要らねぇ。」



約1ヶ月前、そう声を荒らげ、外務省幹部に


キーウ行きの調整を急ぐように指示したのは


我が国の総理である。



電撃的なキーウ行きの舞台裏を検証した、


新聞記事に書かれていた。



「俺一人の命ならいいが、日本の首相が


 命を落とすわけにはいかない」



その記事の隣のページには


イラク戦争開戦から二十年にあたり、



自衛隊のイラク派遣部隊の心のケアを担った


精神科医のメモが明らかになった、という


記事が掲載されている。



当時、小泉元総理は


現地を「非戦闘地域」と発言したが、



そのメモには


「決して安全とは言えない」


「あきれてものが言えない」


と綴られている。



平和な日本から


頭の上をロケット弾がごう音と共に通過する


緊張と恐怖に支配された地域に赴く。



それは、想像もできない過酷な現場だ。





湾岸戦争後、


アメリカ兵に かなりの数のうつ病患者が


出たことは、有名な話だ。



「メンタルヘルス対応は万全」と話す、


陸自の元最高幹部の言葉があるが、



延べ約5.600人の派遣隊員のうち


21人が帰国後、自殺した、という事実は


私同様、知らない国民がほとんどだろう。



精神科医は


「現地で過度な緊張が続き、


 帰国後に急に心身が開放された落差で


 異常が出る例が大半」と指摘する。



そして、心を病んだのは


千人以上だったと推測している。



これは、衝撃的な事実だ。



この記事は



「軍事的任務が増し、隊員の犠牲は


 偶然から必然になる。


 社会の理解を得られない戦いは


 前線に立つ者に犯罪意識を残す。


 大義がなければ人殺しでしかない」



という、精神科医の言葉で結ばれている。



    「大義」って何?


   その大義は 誰が決めるの?





入念に計画され、安全確保を徹底され、


「日本の首相が


 命を落とすわけにはいかない」


と、言葉にできる人のために



私たちの国の安全は


根底から覆されようとしている。



決して 前線で指揮を取ることのない、


常に守られている人が



大義を決め、国の安全を謳い、


国民を危険にさらすのだ。




日本国憲法は 何のためにある?


わたし達は、日本国憲法前文を胸に



「危ない橋は渡らない」


と、声に出していかなければ、と思うのだ。




「そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」