センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

おてんとさまが見ているよ

おてんとさまが見ているよ、とか


おてんとさまに恥ずかしくないように、とか



昔の人の教えというのは


大事な人生の指針になることがある。



誰も見ていなくても 


おてんとさまが見てる。



人間なんて たかが知れてるから


こういう見えない何かに



畏怖の念を持つことは 大事だ。





何年も前になるが


ある金融機関で立て続けに不祥事が起きた。



職員が顧客の預金を着服したのだ。



全部、別々の支店だったが、


その中で支店長による着服が2件あった。



そのうちのひとりは


母の昔からの友人の娘婿だった。



噂は母の耳にも届いていたが、


このニュースが表に出ることはなかった。



母の友人が 娘婿のために


土地などを処分して弁済したのだと言う。



ある日、突然


その友人が母を訪ねてきた。



「噂で聞いてるでしょ?


「あれは、婿がはめられたのよ。」



噂では その婿は生活が派手だったらしい。




やがて、その噂が忘れられた頃



その婿は 姑の友人のコネで


新たな職場に就職した。



けれど



その数年後に、またそこで


お金を着服したらしい、と噂になった。



一度覚えた贅沢は


簡単には 忘れられなかったようだ。



母の友人は


大事な家族のためにできることを全てした。



けれども


それは 娘婿のためにはならなかった。



彼がしたことは 


彼が償わなければ 償いにはならない。




生きていると いろんな場面で


いろんな誘惑がある。



自分の中の悪魔の囁きに


抗えるのも また自分しかいない。



私たちは常に


踏みとどまれるかどうかを 試されている。



誰にも気づかれなくても



   おてんとさまが見ているよ。