センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 こうして女は強くなる


訓練後の掃除をしているとき



息子世代のイケメン男子が何事か叫ぶ。


「わぁっ!」 「無理!マジ無理!」



何がマジ無理なのかしら?


と、おせっかいおばさんが覗いてみると



彼の持つモップに4センチほどのゲジゲジが…




ウソ! このコが無理なの?怖いの?






このイケメン男子は


無口だが、よく気がつくし、器用だ。



何をやらせてもすぐにマスターするし


何をやらせても上手い。



そんな男子が 虫が駄目とは!




しかし


我が家も似たようなものだ。



長男は蜂を見かけると 私に助けを求める。


次男は 蜘蛛だろうがカナブンだろうが


私に助けを求める。



   彼等も言うのだ。


   「マジ無理!」と。







前に住んでいた家には


毎年、蜂の巣が作られた。



こういうときも 私の出番である。


昔は 厳重装備で退治したものだが



今は普通にハエ蚊用のスプレーで退治する。



この、前住んでいた家にはゴキブリも出た。


次男はゴキブリが死ぬほど苦手だ。



当時、ゴキブリの姿を見ないで退治できる、


というスプレーが発売された。



なんだかシリコンみたいな泡が出て


それをゴキブリにスプレーすると



その泡に包まれて 黒い姿を見ないで


そのまま捨てることができるらしい。




 買いましたとも。次男のために。




そして、暑い夏の日、


それを使う日がやって来た。



階段に一匹いると 次男がわめく。



私は新発売のそのスプレーを片手に


勇んで出動した。



  シュッと一吹きする。



  あれ?うまく命中しない。




何度やっても ゴキブリには命中せず


階段にシリコン様の泡がボタボタ落ちる。



壁に逃げるので さらにスプレーすると


泡がベッタリ貼り付いてしまう。



シリコン様の泡が 重いのだ。


重すぎて ゴキブリのスピードに負ける。



あっという間に 1本使いきってしまった。


焦った私は 逃すまじ、と



  スリッパで叩いたのだった。




新発売のスプレーは全く役に立たず


それどころか シリコン様の泡が



あちこちにベトベト貼り付いて


それを掃除するのに 難儀したのだった。



 初めから スリッパを使えば良かった!



カスタマーセンターに


文句を言いたいところである。



しかし、私が文句を言わなくても


おそらく 苦情が殺到したのだろう。



そのスプレーは


すぐに店頭から消えたのだった。








そんなことを思い出しつつ



私は 木の切れ端を拾ってきて


ゲジゲジに止まらせ、


無事に外に追放したのだった。



イケメン男子はホッとしている。




  こうして


  女はみんな、強くなるのである。