センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 ほんの少し風は吹く


何年か前に務めていた放課後子ども教室は


子どもの数がMAX20人くらいで


大人2人で見るのにちょうど良い人数だった。



毎日、子どものために工作を考えたり


一緒に遊んだりするのが楽しかった。



その後、少子化による統廃合で


その放課後子ども教室も統合されて


一気に人数が3倍近くになった。



部屋もかなり広くなり、仕事量も増えた。


校舎と別棟の施設になったので、


トイレ掃除も加わった。



私の主な仕事は、施設の管理と運営で、


子どもの登録リストを作ったり、



毎月のお便りや保護者とのメールのやり取り


行政への予約人数の提出など


事務仕事が主なものだった。



子どもの人数が3倍になったからと言って


働く大人の数が3倍にはならない。



3人の大人で全てを回さなければならず、


多忙を極めた。



いっしょに働く人からはクレームが出る。


他の2人は忙しさから、関係が悪化した。



なるべく、他の人の負担を減らすために


本来は、彼女たちの仕事であるトイレ掃除も


一緒に手伝うことにした。



こちらが率先して働かないと


文句ばかりで動かないし、


事務仕事は楽だと思われていたからだ。



統合による名簿の整理がなかなか進まず、


子どもたちに工作を教えることも難しい。



勤務時間内でこなすことは無理があり、


開設当初は残業代のつかない残業をやり、



家事に支障が出るので


毎朝、早く起きて事務仕事をやった。



そして、辞めるまで毎日、


1時間早く勤務先に行き、ひたすら


パソコンで事務仕事をした。



仕方ない、仕方ない。


仕事なのだから、仕方ない。


仕事とはこういうものなのだ。仕方ない。



毎日、仕事に追われて、


もう仕事が苦痛になった。楽しくなかった。



時間外労働はあたりまえになり、


かなり高めの時給をもらっていたのだが



労働時間で計算したら、


最低賃金を大きく下回っていた。



職員を増やしてもらうように


何度も頼んだけれど



回っているのだから大丈夫、と


上には相手にされなかった。



頑張れば頑張るほど、


時間外労働はあたりまえになり、



人員増強を頼めば、


忙しい時間帯に、上司からお説教の電話が


かかった。



ちゃんと、仕事の優先順位をつけているのか


と。



ふざけんな、と思った。


優先順位をつけてやってるに決まってる。



子どもの安全が第一だし


行政への毎月の報告は最優先事項だ。



そういう問題ではない。人が足らないんだ!


別の施設からのヘルプを入れての3人体制は


誰が見たって無理があった。



頑張って、頑張って、


理不尽な叱責にも耐えたけれど


半年が過ぎて、力尽きた。



このままでは病んでしまう。




今、思うと、やっぱり無理があったと思う。


頑張れば頑張るほど、


そこを利用されてしまう。



もっと怒れば良かった。


こんなのおかしい、って言えば良かった。



私が辞めるとき


別の施設の仲間が、労ってくれた。



よく頑張ったよ、と。



そして、その後、


その施設では人員が増強され、


他の施設では人が大量に辞めて、



パワハラも問題になったので、


パワハラ上司は、パワハラ研修を受けて


大きく改善されたようだった。



我慢は美徳じゃない、と今は思う。


誰かがNoと言わないと、


悪しき慣習は変わらない。



昨年の、世間を賑わせた諸問題は


声を上げることの大切さを教えてくれた。



自分を守ることが


後に続く人を守ることにつながる。



我慢があたりまえになってしまえば


それを、人にも強いることになる。




今も抱える理不尽を、仕方がないと諦めれば


やはり他の人にも諦めを強いることになり、


理不尽を増長させることになるだろう。




私も成長しなければ、と思う。


同じ間違いをしてはいけない、と思う。



黙ってないで、吠えるときは吠える。


そうすればきっと


ほんの少し風が吹く。