センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 「無理!」


これは、


今、務める施設で流行っている言葉である。


もちろん、使っているのは子どもたち。



「宿題、やった?」→「無理!」


「おもちゃ、片付けてね」→「無理!」


「危ないから、走らないで」→「無理!」



もうオールマイティである。


簡潔かつ最強の言葉だと彼等は信じている。


やれ、やれ…



甘えっ子の1年生男子は


学校の宿題と施設でやるドリルを済ませ、


それを片付けるのがめんどくさい。



「せ〜んせ〜、これ片付けて〜」


自分のものは自分で片付けるんだよ(⁠ノ゚⁠0゚⁠)⁠ノ⁠~



「え〜っ、やだぁ〜、せんせ〜がやって〜


みんな、自分で片付けてるよ。自分でね。



「え〜っ、じゃあドリルは片付けるから


 宿題はせんせ〜が片付けてね!」



はい?(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠!


1年生男子は、堂々と交渉に入る。



半分ずつ片付けるから、平等でしょ?


ということらしい。


やれ、やれ…



だから〜、そんなこと言ってる間に


片付けられるぞ?



そんな交渉で大人が片付けてくれる、と


信じているところが1年生なのだ。



交渉に応じる暇がないくらい忙しい。


放っておくと、宿題は無事に片付けられた。


やれ、やれ…





ふと気がつくと部屋いっぱいの子どもたち。


発達障害の子どもに付く人がいない。



受け入れもしなければならないし、


子どもたちに宿題もやらせなければ…



頭をフル回転させ、あちこちに目を配り


階段を上ったり、下りたり…



発達障害の子どもは


あの、TVでお馴染みの塾のプリントを出す。


学校の宿題よりも優先順位が高いらしい。



これが、なかなかの曲者なのだ。



まだ、ひらがなを習っている1年生に


二学期以降に習うような国語の文章題。



答は本文から抜き書きするのだが


その文がかなり長いのである。



これは、少々難易度が高い。


マスにぴったり収めなければならない。



案の定、その男子は暴れ出した。


「難しすぎる!」



だよね〜┐⁠(⁠‘⁠~⁠`⁠;⁠)⁠┌


少し休憩を入れながら、


なだめすかして進めていく。忍の一字だ。



何度やっても、一字書き忘れたりして


うまくマスに収まらない。



パニックになると時間がかかるので


彼におやつを食べさせている間に


途中まで私がマス目を埋める。



上の学年の子どもが


「自分でやらないと、


 塾の先生に怒られるよ」



と口を挟むけれど、限界というものがある。


他の子どもも注意が必要だし、


迎えの時間だって気になる。



どうにか宿題まで仕上げて


その子が帰っていくと、


別の発達障害の子どもが走り回る。



あっちを注意し、こっちを注意し、


ケンカの仲裁に入り、片付けを促す。


もう、ヘトヘトである。




魔法の言葉を私だって使いたい。



     「無理!」