センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

見えないもの、聞こえないもの

前に受けた研修に


多重債務の講義があった。



講師は、


多重債務を専門とする弁護士だった。



冒頭で、講師はこんなふうに話し始めた。



「多重債務って言うと、


ギャンブルで借金したとか、浪費家だとかの


お金にだらしない人たち、


そんなふうに考えるでしょう?」



「確かに、そういう人もいます。


でも、そういう人はわずかです。」




「1番多いのは、ごく普通の人たちです。」




それぞれ、誰にでも


ライフステージの節目がある。


転職だったり、子供の進学だったり


結婚だったり、病気だったり…



そういう節目節目で、ちょっと借りたお金が 


会社の業績悪化とか


自営の経営悪化とか


悪い方向に転がって


返済が滞り始める。



マイホームで組んだローンが


会社のボーナスが止まって、


払えなくなるパターンも多いらしい。



夏のボーナス払いができなかったら、


冬のボーナス払いもできなくなる。



そんなに早く、


会社の業績は回復しないからだ。



こうなると、


多重債務の始まりとなる。







もう、ずっと前


給食費を払わない家庭が増えていると


問題になったことがあった。



テレビでも取り上げられ、


回収に密着した番組もあった。



新築の大きな家に住んでいるのに


給食費を払わない、とか


家族全員、携帯を持っているのに


給食費を払わないとか、



「払えるのに払わない、ずるい人たち」



というスタンスの報道だった。



けれども、


その講師は言う。



多重債務の殆どの人たちは、


お金にだらしない人たちではない。



なんとか借りたお金を返そうと


真面目に努力するからこそ、


給食費さえ払えなくなるのだ、と。



そこに回るお金さえも


無くなるまで返そうと努力するのだ、と。



だから、


相談を受けたときに、必ず


「給食費は払えていますか?」


と、聞くのだと言う。



聞かれた相手は、


初めてぽろぽろと涙をこぼす。



払いたくても、払えない現実があるのだ。



働いて、お金を返していくためには、


携帯は必需品だ。 


仕事の連絡に、携帯は必須だからだ。




講師は、最後に



多重債務は他人事ではない。


誰にでも起こり得る事なのだ



と、話を結んだ。







情報は、簡単に手に入る時代だが


私たちは、


上面だけをなぞって


訳知り顔で、意見を言う。



見えないものを見ようともしないし


聞こえない声を聞こうともしない。



それは


ただ、


私たちに、今、起きていないだけなのに。




自分を守れる自分になって



  知るべきことを



     ちゃんと知ろう。