センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

負の連鎖

義父はアルコール依存だった。


家族も親戚も友人も


その問題に頭を悩ませたが


誰にもどうすることもできなかった。




義父の父親もまたアルコール依存だった。


お酒が過ぎて、冷静な判断ができず


たくさんあった田畑を失うことになった。


そのために


義父はとても苦労した。



義姉もまたアルコール依存だった。


義父が入院した時、皆で付き添ったが


そんなときでも


スナック通いを止められなかった。



飲酒に溺れる義父を嫌った義姉は


子供に止められても、夫に止められても


スナック通いを止められなかった。






それらの問題に直面した夫も


アルコール依存だった。


義母の悩む姿を見ていても


義父の飲酒に振り回されても


自分の依存は他人事だった。







夫婦の間で 


相性が悪いとか 価値観が違うとか


そんなことはよくあることだ。



誰でも聖人君子とはいかないし


たくさん間違え


たくさん傷つける。



しかし


アルコール依存は別の問題だ。






義母は義父より先に亡くなった。



義父は、


お酒の力で 義母を見下し


ケンカばかりの二人だった。



しかし


義母の突然の死は


驚くほど義父を打ちのめした。



ある日、友からの電話に



  お酒は止めた。罪滅ぼしだ。



    と、力なく笑った。




それを聞いたとき



どうしようもない虚しさに襲われた。




結婚生活の殆どを


義父の飲酒に悩まされ


離れて暮らすことを望んだ義母に


なぜ、もっと早く


願いを叶えてあげられなかったのか。



一度きりの人生を


二度とない人生を


どうして大事にしてあげられなかったのか。




どんなに後悔しても


どんなに謝っても


もう二度と命は戻らない。



私はこのときほど


人生がたった一度しかないのだと


強く感じたことはなかった。







だから



夫と離れたいと願うことが


もう彼を背負えないと思うことが



冷たいだとか


ずるいだとか


非難されることだとしても



私は私の


一度きりの人生を守るために



この負の連鎖を


ここで止めると決めたのだ。




誰の人生も


等しく大事なものだから。