センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 いちご再び


私は、いちごと相性が悪いらしい。



例によって、旅行中の兄からライン連絡。



兄宛てにいちごの届け物があって、


旅行中だから、宅配業者に連絡をして


私の家に届くように手配した。



受け取って、食べて欲しいというのだ。


いちごか…私は少しだけ嫌な予感がした。



夜の7時以降に配達される、とのことだが


待てど暮らせど来ない。



結局、その日は届かなかった。



翌日、兄が宅配業者に確認して


翌日中に届くように手配したが



郵便ポストに配達済みの不在票があるのみ。


何かの間違いで


別の事業所に転送されていたようだ。



仕方ないので、


今度は私が再配達の依頼をした。


翌日の朝には到着するように、と。



いちごはやって来た。


もう、あと数分で正午になる、という時に。


私は覚悟した。いちごは鮮度が命なのだ。



いちごの箱を受け取ると


それは既に不穏なにおいがした。



真っ赤な、大きないちごは


予想どおり、ほとんどが傷んでいた。



私は悲しくなった。



4パックの大きないちごは、新鮮であれば


どんなに甘く、おいしかっただろう。



送り主は、兄のために


兄が喜んでくれることを期待して



立派ないちごを送ってくれたのだ。



その気持ちが、実ることなく


無惨な形になって、私の目の前にある。



このやり場のない気持ち…



宅配業者を責めることもできるが


宅配業者も、もういっぱいいっぱいなのだ。


物流は限界に来ている、と報道されている。



誰も悪くない。誰も責めたくない。



けれども、この送り主の気持ちは


やはり大事に受け取りたい。



私は、落胆から立ち直り


いちごの傷んだ部分を丁寧に取り除き


いちごのジャムを作った。



部屋には いちごの甘い匂いが広がって


私の気持ちを慰めてくれたのだった。