センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 桜の花の中



旅行から戻って来た母は


何事もなかったように能天気である。



問題を起こして、人様に迷惑をかけたことも


それで、兄が激怒していることも


とにかく忘れている╮⁠(⁠╯⁠_⁠╰⁠)⁠╭



私は、地域包括支援センターとか


病院とか、あちこちに電話をして


まずは 現状を知ることから始めた。



どこの病院も、ほとんどが予約制なので


午後からの短時間勤務にしておいて


正解だった、と思う。



母は総合病院の眼科の予約が入っていたので


私が連れて行って、ついでに他の科で


診てもらおう、と考えていたのだが



予約制では仕方ない。


また、あちこち調べて予約の要らない病院に


連れて行くことにした。



病院の横には、桜並木があり


ちょうど満開を迎えている。



春の眩しい光の中で 


淡いピンクが 心を和ませてくれる。



母は自分の頭がおかしくなっていることを


ちゃんと自覚している。



母には二人の弟がいるのだが


そのひとりに電話をかけて


「私の頭はちょっとおかしい」と嘆く。



するとその叔父も


「僕の頭もちょっとおかしい」


と返すらしい(⁠☉⁠。⁠☉⁠)⁠!



それを、兄に話すと


「恐ろしい会話だ」と爆笑していた。



そう、そう。笑い飛ばすくらいでいい。


兄は旅行中、気鬱になっていたようだが



悩んでいたって、良くなるわけではない。


当人はひと晩経つと 忘れてしまうので


それはそれで幸せかも知れない。



病院から帰ると


巻いていたストールがない、と母が言う。



モヘアで編んだ、白いストールらしい。


ストール?巻いていたっけ?覚えていない。



あまりに気にするので


自宅に戻ってから 病院や薬局に電話したが



どこにもなかった。


母に電話して、それを伝えた。



それでも、気にするんだろうな、と


自分のあれこれの雑事に追われていたら



母から電話があった。



「私ってなんか探してた?」


「うん、白いストールだよね?」



「白いストール?ふさふさのついたやつ?


 …あった。」



ん?「どこに?」


  「ここに(家に)」 (⁠・⁠o⁠・⁠)



 

ある、あるだなぁ╮⁠(⁠╯⁠_⁠╰⁠)⁠╭



午後から気温も上がり


もう、毛糸のストールもお役御免である。



私は ちょっと自分を癒やしに


ひとりで桜の花見に出かけたのだった。