センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

②ブルシットジョブ〜クソどうでもいい仕事〜



あの子は


シャイなアラレちゃん、といった感じの子で



みんなに愛された。



1学期の間


学校の廊下で、階段で、運動場で、



クラスの子だけでなく


学年を超えて たくさんの子たちに


声をかけられた。



まるでアイドルのように


名前を呼ばれ、手を振られ、ハグされた。



大人の私から見ても 


あの子はなんとも言えない魅力があった。



みんなが あの子と遊びたがったし


あの子のお世話をしたがった。



あの子は 溢れる笑顔で楽しそうだった。






授業での支援に付いてみると


あの子には できないことが多かった。



先生の話はきちんと聞くことができるし


簡単な指示は、よく理解できた。



しかし


読み書きは全くできなかった。



絵も描けなかったし、はさみも使えない。


トイレトレーニングも必要だった。




私が最初にしたことは



鉛筆を正しく持たせることと


スプーンを正しく持たせることだった。






何故、給食に介助が必要かと言うと


保育園のときに 


給食を喉につまらせたことがあったからだ。



食べるのが遅いので 


給食が終わる時間に 食べ終わらず、


焦って口に詰め込みすぎ、窒息しかけた。



先生ひとりでは 目が届かない。


保護者の要請により、


給食介助が付くことになったのだ。



先に給食の介助に付いていたのは


介助アシスタントだったので、



介助方法を尋ねてみた。



すると、「全介助です。」と言われた。


全部、口に運んで食べさせているのだと。




しかし


初めて 私が給食介助に付いたとき



あの子は おかしな持ち方はしていたが


スプーンを持って、自分で食べていたし


きちんと咀嚼できていた。



確かに 食べるのは遅かったが


それは 他の子たちの様子が気になって


手も口も止まってしまうからだった。



とりあえずは 


自分ひとりで食べられるように


スプーンの正しい持ち方を教えて



前半はひとりで食べさせた。


後半は 時間が足らなくなるので


私が口元まで運んで食べさせた。



介助アシスタントは


食べきれないので 量を半分に減らすと


言っていたが



十分、他の子と同量を食べることができた。



介助アシスタントは


控えめな、とても良い方だったが



この給食介助については


擦り合わせが必要だと感じていた。



自分で食べられるようにすることが


何より優先されなければならないし



時間内に食べることを考えつつ、


育ち盛りなので、量を減らさないことが


大事なことだと思った。






私は あの子がかわいかったし


あの子の成長に関われることが嬉しかった。



しかし


介助アシスタントも支援員の私も



あの子の成長を願いつつ


結局は それを阻むような仕事になることに



まだ、気づいていなかった。



これが ブルシットジョブになるなんて


その虚しさに苛まれるなんて



    思いもしなかった。