センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 「無知は弱さになる」




病院へ行くときは


文庫本を1冊持って行く。



先日、胃カメラと乳がん検診の結果を


回収に行ったときは



堤未果さんの「沈みゆく大国アメリカ」


という本を持って行った。



買ってから、ずっと本棚で忘れられていた。



オバマ大統領の頃の話だから 


8年ほど前に書かれたものだ。



堤未果さんを初めて知ったのは


「貧困大国アメリカ」という本だった。



当時、アメリカでは 大学の学費が


ものすごい勢いで上がっていた。



学費のためにローンを組んで


またたく間に借金が膨れ上がる学生の悲劇が


書かれていた。



日本も他人事ではない、と書かれていたが


実際、日本でもほどなくして


同じことが起こった。



「沈みゆく大国アメリカ」では


オバマケアに焦点を当てている。



アメリカの医療費が高額なのは有名だ。



アメリカには日本のような国民皆保険制度が


なく、市場原理が支配するため、



薬も医療費もどんどん値が上がり、


一度の病気で多額の借金を抱えたり


破産するケースが珍しくなかった。



そこで オバマ元大統領が行った改革が


アメリカに皆保険制度を入れること、


すなわちオバマケアの導入だ。



国民から歓喜の声で迎えられたオバマケアは


しかし、国民を幸せにはしなかった。





アメリカでは


自己破産理由のトップが医療費だと言う。



大手の保険会社や製薬会社が儲けて


医師は疲弊し 患者は見捨てられる。


恐ろしい話だ。



教育や医療に市場主義を導入すると


どんなことになるか、という


他人事ではない見本である。



日本には決して起こらない、と


言えるだろうか?



このアメリカの話の怖いところは


国民の多くが オバマケアのマイナス部分を


ほとんど知らされていなかったことだ。



私たちの国は大丈夫だろうか。



ちゃんと目を開けなければ。


ちゃんと耳を澄まさなければ。



ハゲタカはやがて日本にやって来る。



医療費で破産するなどという悲劇は


なんとしても避けなければならない。



経済の優先と引き換えに


人々が命を差し出すことなど


あってはならない。



この本に登場する、ハーレムの医師は


「無知は弱さになる」と説く。



そして



「今の医療保険制度を、空気のように当たり


前にあるものだと思わないことです。


制度というものは、一度奪われると取り戻す


のは本当に大変ですから。


奪われないためには、自分の国の医療制度く


らいは最低限知っておくことです。


と語っている。




目を開けて、耳を澄まして


「黙らない」私たちでいなければ、と思う。



    無知は弱さになる。