センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 人を魅了する力


小さい頃、


隠れ家的な、落ち着いたステーキハウスに


母とその友人と私とで出かけた。



大人2人は楽しげに話していたが


子供の私はつまらない。



子供向けの本も無かったので


仕方なく1冊の雑誌を手に取った。



その雑誌は三島由紀夫の自決を


写真と共に掲載していた。



私にとっての三島由紀夫は


その雑誌での印象が全てだった。






著書のタイトルくらいは知っているが


読んだこともないし、興味もない。



同じように


全共闘にも 学生運動にも 興味はない。




全く興味も無かったのに



プライムビデオで


「全共闘VS三島由紀夫の討論」という


ドキュメンタリーを見つけて


なんとなく 見ることにした。



つまらなそうだな、と思っていたのに


なんだかずっと見続けてしまう。



三島由紀夫がとても魅力的なのだ。



タイトルから 


もっと激しくバトルするイメージだったし


三島はいけ好かないタイプかと思っていたが



その論争も ユーモアがあって


時々 笑い声に包まれて


思っていたより 和やかなのだ。



観念的で 哲学の講義を聞いてるみたいで


凡人の私には理解できないのだけれど



タバコを何本も吸いながら


論を闘わせる、その様が魅力的なのだ。



学生の青臭さを馬鹿にしないで


上からではなく、


真摯に 対等に 話を進めていく。



学生も三島も 少しも言いよどむことなく


相手の話を きちんと聞いて 理解して


すぐさま切り返していく。



その頭の回転の良さや


ラフな話し方をしながらも


どこか ちゃんと品がある、その様が


なんともかっこいいのだ。



全く反対の立場に立つ、学生と三島が


どこかで 相手をリスペクトしながら


討論を続ける様が



会場にいる人たちを魅了しているようにさえ


見える。






昨日のゼレンスキー大統領の国会演説は


彼の人間力を感じさせるものだった。



賛否両論、色々な意見はあるが


トップとして 


国民が このリーダーについていきたい、


と思わせるような魅力がある。



人を魅了する力というのは


その人の人間力に依るものだと思う。



原稿棒読みの人間にはない、


その力こそが


人の心を開くものなのかも知れない。



全く三島に興味が無かった私でさえ


彼の著書を読んでみたいと思うのだから。