センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

負け組のひとりごと

「お母さんが泣いとるぞ。」


と、とても偉そうに夫が言った。



まだ、義父が存命だった頃のことだ。



義父もまた、アルコールに依存する人で


義母はとても苦労した。







結納の日に初めて会った義父は


とても静かで、おとなしそうに見えたが、


夫を始めとして、義母も義姉夫婦も


お酒を飲ませまい、と必死になっていた。




結婚して、それが何故だかよくわかった。


義父は、既に70を過ぎていたが


毎日、朝からお酒を飲み、


一升瓶を3日で空けた。


そのくせ、お酒に呑まれてしまうので、


何かと周りに迷惑をかけた。



何度も離婚を考えた、という義母は


息子に建て売りを買わせ、


義父から逃げるように別居した。




どこぞと似ている話ではないか?







父親の酒癖の悪さに悩む母親を見て



「お母さんが泣いとるぞ。」



と、夫は義父に説教を始めたのだった。




   「どの口が言う?」




私は偉そうに上からモノ言う夫を見て


心の中でつぶやいた。



   私だって泣いてるぞ。


   貴方の妻も泣いてるぞ。







義父のお酒に苦労したと嘆く義母は


高速を走ってやって来る息子を


いそいそとビールを冷やして出迎えた。



私は、何度言っても聞く耳を持たない夫に


不信感を持っていた。



私の小さな息子も乗せて行くのだ。


飲酒運転はさせたくない。



「どうかビールを飲ませないで下さい。」



義父母に宛てて手紙を書いた。



  無論、何の効果もなかった。




お酒に依存する義父が言えた義理ではないし



可愛い息子に嫌われたくない義母も



飲ませないとは言えるはずがなかった。



義姉にいたっては


夫の飲酒を嘆く私に



「私もちょうだい、って


一緒に飲んじゃえばいいよ。」



と、見事に的はずれなアドバイスをくれた。



この義姉も、


アルコール大好き族の一員だと


後に判明するのだが。




どいつもこいつも、


        という話だ。







苦労の足らない私に、


神様が用意してくれたレッスンは


私にはとても厳しいものだった。



そして、


何より厳しかったのは



悩んで、悩んで、悩んで、悩んで



あらゆる方法を試して、



何度も何度も話し合い、 




それでも



少しも通じ合えなかったことだ。



義母の気持ちを察することはできても


妻の気持ちなど、わかろうともしない。




      私は



      どうしたって 


       

      負け組だった。