センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

いつかの誰かの離婚裁判

以前、受けていた研修に


裁判所の裁判を傍聴して、


レポートを提出する、というのがあった。



基本、裁判は公開されているので、


誰でも傍聴することができる。



私は、たまたま覗いたのが


離婚裁判だったので、


他の何人かといっしょに傍聴した。



裁判は既に始まっており、


たくさんの司法修習生が傍聴していた。


黒いスーツ姿の彼らと


私たちおばさん族とで、席が埋まっていた。





普通は家裁の調停で解決するのだろうが


何かこじれる原因があったのだろう。



三十代前半の夫婦だった。


子どもは就学前の男の子ひとり。


その日の争点は、お金の問題だった。



夫は仕事で鬱状態になり、


妻はそれを支えることができなかった。


おそらく、仕事ができなくなった夫に


妻は不安があり、優しくできなかったのだろう。


夫の方が心が離れてしまい、


離婚を求めたようだった。


そして、妻は 離婚を拒んでいた。



妻側の女性弁護士2人はまだ若く、


夫の父親が勤務する会社に言及していた。


それは、地元では有名な会社で、


父親が裕福であろうということを


言いたいようだった。


夫は鬱病で仕事ができないため、


慰謝料や養育費など、


夫の父親に頼ればいい、という意味だったのだろうか。


個人情報が厳しく管理される時代に


こんなことまで公開されてしまうことに


とても驚いたのを覚えている。






夫側の男性弁護士は、いかにもベテランで


傍聴者が多いことを意識したのか


どんどんパワフルになり、


熱弁を振るっていた。



妻が別居中に勝手にマンションを購入したのは、


離婚の慰謝料を意識したのではないか、


と鋭く切り込んでいた。



まるでドラマを見ているような裁判は、


素人目にも夫側が有利だった。



夫はなかなかのイケメンで


妻もとても可愛い人だった。



絵に描いたような、


幸せなカップルだったはずだ。


こんな風に


たくさんの人の目に晒されて


裁判にまでもつれるなんて


誰も想像もしなかったはずだ。




次回が結審だと裁判長が告げ、


私たちの傍聴は終わった。



私は既に夫との別居を始めており、


赤い糸の伝説は


誰にでも当てはまるものでもないのだと


複雑な気持ちで


裁判所を後にしたのだった。



(画像は全てとんこさん提供のものをお借りしました。ありがとうございます。)