センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 「ヴォカリーズ」


今朝、歩きながら


チェロの音楽を聴いていたら


この曲が流れた。



「ヴォカリーズ」



私は とてもつらいとき


この曲に救われた。





まだ、子どもたちが幼少の頃のこと。



義父が手術後に退院してきて


義母がわがままな義父と二人きりに


なるのを嫌がり



夫はずっと義父母宅に泊まっていた。



長男が発達障害だと診断され


それを受け止めかねている頃だった。



私は仕事もしていたし 小さな子ども2人と


目が回るような毎日だった。



長男のことも 夫は他人事のようだったし


ワンオペ育児も女ならあたりまえだ、と


考えているようだった。



私は疲れてクタクタだったし


何も通じ会えない夫に落胆していた。



ある日、


子ども2人を乗せて車を運転していたら



もう、何もかもどうでも良くなって


このまま高架橋の橋脚にぶつかって


全部終わらせたらいい、と思った。



そうしたら家族に無関心な夫も 


後悔し、反省するだろう。



私の心は ささくれていて


ものすごく孤独だった。



暗い気持ちでハンドルを握っていると 


つけていたFMラジオから



藤原真理さんが奏でる、


美しいチェロの調べが流れてきた。



それが「ヴォカリーズ」だった。



なんと形容したらいいのかわからない、


ただただ、心に染みる音楽だった。



私の中の無数の棘が


一本一本抜けていくような



「癒やし」という言葉がぴったりの、


美しい音楽だった。



Nana - ヴォカリーズ 作品34-14(ラフマニノフ)


チェロに興味を持つようになったのは


それからだ。



私が朝聴いていた音楽プレーヤーには


チェロによる「荒城の月」や「赤とんぼ」も


入っていて



この日本の曲にも


チェロの音はよく合っていて



慌ただしい毎日の中のこの一瞬を


深く穏やかなものにしてくれるのだった。




荒城の月(瀧廉太郎=迫田圭) チェロ:細井唯 The Moon over the Ruined Castle - Rentaro Taki arr. Kei Sakoda