センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

「約束」

私は天の邪鬼で


卒業式に泣くのは嫌だ


と何故か考えていて、


4回の卒業式で一度も泣いたことがない。


可愛げのない学生だったのだ。






本を読むのが好きで、


たくさんの本を読んできたけれど


どんなに心を揺さぶられても


涙が溢れ出る、という経験はなかった。



そんな私が


初めて本を読んで泣いたのは


石田衣良さんの「約束」だ。



NHKの番組に出ていた石田さんは


スマートで いつも涼しげで


何かで目にした随筆も素敵だった。



石田さんの著作に興味を持ち


初めて手に取ったのが


「約束」という短編集だった。



その表題作を読んでいるうちに


知らずしらずポロポロと涙がこぼれ出た。



主人公の少年の繊細な心の描写が


切なくて 哀しくて


忘れられない1冊となった。






ふとそんなことを思い出したのは  


宮城のこども園に


子供を殺す目的で侵入した男が


逮捕されたというニュースを聞いたからだ。



「約束」は


あの池田小学校の事件に衝撃を受けた


石田衣良さんの想いが


書かせたものだったからだ。



何か特異な事件が起こると


それを模倣する輩が現れるが


見知らぬ誰かも 必ず誰かの宝物で  


失うことの哀しみは


誰もが同じなのだということを


届ける術はないのだろうか。



深い哀しみの中から 


また顔を上げて歩み出せることを


「約束」は伝えてくれる。



ねじれた心は 


きっと涙が浄化してくれる。


石田さんの想いが


多くの人に届くといい。