センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

心の距離は目に見えない ②

 突然、パンドラの箱は開いた。



同い年の彼女が同期の男性との飲み会に合流することを提案すると、


年下の彼女がすぐにそれを遮った。


私たちだけで話したいことがたくさんある。

私たちだけで集まりたいと。


私は皆が良ければどちらでもかまわなかった。

しかし、年下の彼女の言い分は尤もだ。

私たちはやっと久しぶりに会えるのだから。


私が年下の彼女に賛同すると、


同い年の彼女は、同期の男性には断りを入れる、と返信してきた。


そして、


今までと同じように、私たちに近い街で集まろう、と提案してきたのだった。


今回は遠くの街で集まろうと話を進めてきたのに、自分の提案が賛同を得られないと知るや、元の計画を白紙に戻すのは失礼だ。


何より、自分の住む街に皆が集まってくれることを喜んでくれた年下の彼女に申し訳ない。


しかし…


同い年の彼女は譲らず、


いきなりこの話を終わりにした。


「私は今回は辞めておきます。

          お二人でどうぞ。」


いきなり目の前でガッシャーンとシャッターを下ろされたようだった。


しかも


同い年の彼女は、捨て台詞のように

こんな言葉で締め括った。


「同期の男性に断る口実ができて良かったで           す。」





私は突然のことに驚き、呆然としていた。


繊細な年下の彼女が、このやり取りをどう感じているだろう。


すると


すぐに個人ラインで年下の彼女から連絡があった。


同期の男性との飲み会と抱き合わせなら遠くの街に行ってもいいが、私(年下の彼女)と会うためだけなら気乗りしない


と言われたようで、心がえぐられた、と。


そして、


今まで黙っていたけれど…

と続けた話は、


以前、


年下の彼女が同い年の彼女から、しつこく何かの講演会に誘われ、仕方なく母君と参加してみたら…


それはマルチまがいの講演会だった。


娘とのお出かけを楽しみにしていた母君は

自分の娘が友だちに騙されようとしていることに驚き、


そして、娘がマルチまがいであることを知りながら、母である自分を誘ったのではないか、と疑ったのだと言う。


しつこく誘われたから、友だちとして断りきれず、母君まで誘って行ったのに、


それがマルチまがいの講演会で、

同い年の彼女も主催者側の人間だった。


大好きな母君の気持ちを思い、

年下の彼女は胸を痛めたのだろう。


そのモヤモヤを


年下の彼女はずっと誰にもこぼさず、


だからこそ


今回くらいは自分の街に来て欲しかったのだと打ち明けた。





マルチまがい…


信じられなかった。

同い年の彼女が主催者側で

そこに友だちを誘い出すなんて…


しかし、


同い年の彼女からは、私も何度か講演会に誘われた。都合がつかず断っていたのだが、


年下の彼女に言わせると、それは全てマルチまがいなのだと言う。


言われてみれば


彼女から高価なバナジウム水を勧められたことがあった。ずっと前のことだ。


そして


退職直後、体調不良だった私に

突然、電話をかけ、


自分が飲んでいるお勧めの飲料があるのだと熱心に話し始めた。


高価だが、自分にはとても効果があったのだと。私にもぜひ、と。


あれは、そういうことだったのか?


自分の利益のために

友だちを巻き込もうとしたのか?


他にも、


同い年の彼女は


コロナワクチンの危険性とか

コロナワクチンによる死亡率とか

コロナワクチンの陰謀説とか


不確かな情報を

年下の彼女に沢山送りつけて来たのだと。


年下の彼女は堰を切ったように

今までのあれこれを書き連ね、


そして、


そんなことをぶちまけた自分を責めていた。


ただ、ただ、

久しぶりに会いたかっただけなのに


どうしてこんなことになったのか…と。


それは


全く


私も同じ思いだった。




         続く