センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

「はぁっ?意味がわからない」



世の中には


こういう言い方をする人、割と多いと思う。




  「はぁっ?意味がわからない」




そう、あの独特のニュアンスで。




私は苦手なのだ。


こういう言い方をする人が。


あの独特のニュアンスが。






前に務めていた事務所に


これが口ぐせの上司がいた。




エリアマネージャーの彼女は


仕事のできる、優秀な人だった。



しかし、だからなのか


ちょっとしたミスにも厳しく



思いっきり上から


見下したように言うのだ。



  「はぁっ?意味がわからない」




みんな、この人が苦手だった。



誰かが報告しなければならないこと、


提出しなければならないこと、などを


忘れると、みんなの前で注意された。



或いは


一斉メールで名指しで注意された。



ターゲットになるのは


彼女の嫌いな男性であることが多かったが



この言葉で撃ち抜かれなかった奇跡の人は


皆無だった。



人前であからさまに注意しなくても


呼び出して注意すればいいし、



一斉メールで注意しなくても


個人メールで注意すればいい。



しかし、彼女は


わざわざ晒すようなやり方を好んでいた。



こうすれば、他の人にも


恐怖をお供にした注意喚起ができるからだ。


誰だって こんな晒され方はされたくない。




残念な人だな、と思う。




彼女が原因で辞めた人は


1ダース以上2ダース未満といったところか。



私もそこを辞めた理由の一因は


彼女だった。



新規立ち上げの施設で


その準備から ほとんどワンオペだったのに



エリアマネージャーの彼女は


一度だって様子を見に来たこともなかった。



そのくせ


報連相を怠ることは許されず



彼女の機嫌が悪いときは


電話連絡をしても 冷たい対応だった。



 「はぁっ?意味がわからない」



彼女のその言葉を電話で聞くたびに


仕事への意欲が大きく削ぎ落とされるのだ。




彼女は機嫌の良いときに言った。


「私は絶対に仕事を辞めないと決めている」




彼女は2ダース近くの貴重な人材を


彼女の辛辣な言葉で撃ちまくり 倒した。



それでも 今尚、仕事を辞めずにいて


ラスボスのように 君臨しているらしい。



今日も誰かが撃ち抜かれているだろう。



   「はぁっ?意味がわからない」