ロマンス詐欺にご用心 ②
5年前の夏、私はある資格の養成研修で忙しい日々を送っていた。
秋には試験を控えていたので、仕事と研修、さらに試験勉強と、かなりタイトなスケジュールをこなしていた。
そんな中でのお盆休みは、ちょっとひと息つくことができる貴重なもので、気持ちも少し緩んでいたのかも知れない。
メールのやり取りが始まると、彼は毎日まめに送信してくれた。
内容は日常的な他愛ないもので、よくある色恋モードになることはなかった。
何故なら、メールでのやり取りを希望する彼に対して、私はこう釘を刺したのだ。
親子ほどの年齢差があるので、もっと若い方とやり取りした方がいいのでは?と。
インスタグラムは若い人がやるもの、という先入観が相手にはあったのだろう。
だからこそのあのイケメンプロフィールだったのだ。
若い女性なら、たやすく色恋モードに持っていける、という打算があったのかも知れない。
しかし、その想定外の年齢差にも彼は怯むことなく、メールを続けた。
そして私も、この結末がどこに向かうのかを見届けたい好奇心に勝てなかった。
彼は、
自分が若き社長である設定には忠実で、
「今夜は取引先の常務と会食なので、メールはできないと思う。」
などというネタも上手に盛り込むことを忘れなかった。
怪しい…
私は常にそう感じていたが、その他愛ないメールのやり取りが、あのブログの幾つもの写真が、
嘘ではないかも知れない…
という信じたい気持ちを呼び起こしたのもまた事実だった。
やがてお盆休みは終わりに近づく。
また、忙しい日々に戻るのだ。
そろそろこのやり取りは終わりにしなければならない。
すると、
彼も結末に向けて動き出した。
「携帯を落として壊してしまった。」
だから、新しいアドレスに繋がって欲しいと。せっかく知り合ったのだから、このままやり取りを続けたいのだと。
これで決まりだった。
罠だ。
私はすぐにメールをブロックし、インスタグラムの公開を停止した。
後にアメブロで彼のブログを探したが、もう既に見つけることはできなかった。
あれは誰だったのか?
単なる成りすましなのか、それともあのイケメンもグルなのか…
今となっては確かめる術もない。
おそらくアダルトサイトか何かに誘導するつもりだったのだろう。
そのアドレスは既に経営していない電話会社のものだった。
その後、私の迷惑メールボックスにはアダルトサイトに誘うメールが山ほど来た。
その件名が既にアダルトなのだ。
そういえば、
アメブロで彼のブログをチェックした直後、
別のイケメンから友だち申請が来ていた。
もちろん、別人の写真だろう。
つまり、
彼らは幾つもの罠を仕掛けて待っているのだ。
一度罠にかかると、また別の罠にかかるようなシステムができている。
だから怖いのだ。
私が見た新聞記事によれば、ニセイケメンはその名前で何度も人を騙したらしい。
その名前を検索すれば、被害事例にヒットするという話もあった。
アダルトサイトに誘導する。
あるいはロマンス詐欺でお金をむしり取る。
色々な形で騙し続けたのだろう。
こんな話を思い出したのは
外国人のロマンス詐欺に騙された女性のインタビューを目にしたせいだ。
軍人だとか医者だとか
甘い言葉に惑わされ、多額のお金を送金させられ、そして連絡が途絶える。
私は少しわかるのだ。
会ったこともない人が
その写真とその文章のイメージだけで騙される。その世界が本当にあるのだと信じてしまう。
怪しい…
頭のどこかで思っても
信じたい自分が現れるのだ。
今日もまたどこかで…
バンクシー展より
ロマンス詐欺にご用心。
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