センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 夫の宿題



夫の死が確認されたその夜



警察署のベンチで


待っていた葬儀社の人がやって来ると


葬儀についての説明と金額の説明があった。




選択、決定、選択、決定の繰り返しで


どこまでも数字が追いかけてきた。




朝、突然に突きつけられた死を


まだ、受け止めかねているのに



現実的な数字の選択を繰り返していく。






夫が住んでいた荒んだ部屋も


なるべく早く片付けなければならなかった。



パトカーや救急車がやって来たことで


人が亡くなった部屋だということが


近隣には知れ渡っていた。




そうした死は


どうしても 忌み嫌われる。




近隣に住む人の言動から


それが痛いほど感じられ 



私たちには とても厳しい現実があった。







だから 



次男と二人で検索して


遺品整理と特殊清掃をしてくれる業者を


探した。




見積もり対応は次男が引き受けてくれた。



3人で片付けをした翌日から


毎日、ひとりで出かけて 


業者の見積もりに立ち合ってくれた。




それも



選択、決定、選択、決定の繰り返しだった。



結局



25万円で決着した。



安いのか 高いのか わかるわけもない。



とにかく 終わらせないといけないのだ。






いろいろな気持ちが交差する中で



この具体的な数字だけが



私たちを現実に引き戻す。




夫が残した宿題は山ほどあって



まだまだ



数字が私たちを追いかけて来て



緊張を強いられる日々が続く。