伏線回収
それはまだ息子たちが小中学生だった頃。
ある日、晩ご飯の片付けを終えて
見るともなくテレビを見ていた。
なんとなく体が重だるく、少し顔が痒い。
当時は体調が悪いことなんてざらにあり、
ちょっと疲れがたまってるのだと思った。
翌日は平日だったが、私は仕事が休みで
同じく仕事が休みの友だちと
ランチの約束をした。
近くに美味しいお好み焼きのお店があり、
私の家からも、友だちの家からも
徒歩で10分ほどの距離だった。
私の顔はまだ少し痒みがあり、
ほんの少し瞼が腫れぼったい感じがしたが
特に体調にも問題はなかった。
お天気も良く、歩くと軽く汗ばむくらいの
気持ちの良い日だった。
私たちは美味しいお好み焼きを食べ、
楽しくおしゃべりを楽しみ、
満足して帰途についた。
当時、私が住んでいた家には、
階段を上がったところに姿見があった。
階段を昇りきって、ふと目を上げると
その姿見には別人が映っている。
一瞬、呼吸をするのも忘れるくらい驚いた。
誰?
そこに映るはずの私の顔は、
見慣れた私のその顔ではなかった。
30年も時間が経過したかのように、
私の服を着た老婆が立っているのである。
誰?!
部屋の中に入り、再度、鏡を確認する。
でも、やっぱりそこには老婆がいるのだ。
何が起こった?
あまりのショックに思考は停止する。
息子たちが学校から帰ってきたが、
まじまじと顔を見るわけでもないので、
彼らは気づかない。
やがて、夫が帰って来た。
「ねぇ、私の顔、変じゃない?」
恐る恐る夫に尋ねると、
私の顔を覗き込んだ夫は声を上げた。
「うわっ!すっげーババァ!」
思いがけないことが突然起こると、
その人の本質が垣間見えることがある。
ある日突然、
老婆になってショックを受けている妻に
こんな反応はありえない。
ありえないが、見た目は確かにその通りだ。
ただあまりに表現が稚拙で貧困で
デリカシーに欠けていただけである。
生きていたら、
今でも文句を言いたいくらいであるが、
それは、私があの世に行くまで取っておく。
覚えておれᕦ(ò_óˇ)ᕤ
何故、私が突然に老婆に変身したのか、
しばらくはわからなかった。
でも、その何年か後、
私はテレビに映る画像を見て、
ようやく答え合わせをする機会を得る。
それもまた突然に舞い降りたのだった。
その話はまた後ほど…

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