センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 春の憂鬱


ぼちぼちと目と鼻が反応し始める。


花粉である。



もう花粉症とも長い付き合いなので、


その症状にも慣れたものだが、


少し要注意なのが、そのオプションである。



3年ほど前から、食物アレルギーがある。


それも、花粉症に連鎖するアレルギーだ。



それはある日突然始まった。



なんだか唇が腫れるなぁ、痒いなぁ、と


思っていたら、口内の粘膜に斑点が出た。


赤黒い斑点が粘膜のあちこちに散らばる。



斑点そのものは痛くも痒くもないが、


なんだかグロテスクで怖くなった。



鈍感な私でもさすがにアレルギーを疑い、


何がいけなかったのか、あれこれ考えた。



それ以前にアレルギー検査も受けていたが、


花粉以外に疑われるような食物はなかった。



何だろう?


今まで普通に食べて来たものばかり…



それでも、なんとなくではあるけれど、


トマトが原因ではないかと考えた。


春の食卓に並ぶ回数が多かったからだ。



検索してみると、


スギ花粉症の人は、トマトにアレルギーを


起こすことがあるということがわかった。



スギ花粉とトマトのたんぱく質は


構造が似ているのである。



小さい頃からトマトは好きだったけれど、


それまでアレルギーを発症することは


全くなかった。



本当に「ある日突然に」なのだ。



しかし、調べていて気づいた。


まだ、父が生きていた20年以上前に、


私は口腔アレルギーを発症していたことに。



ある日のお昼に、


母が作ったナスの揚げびたしを


父と一緒に食べていた。



食べてほどなく、


喉の辺りが痒いような感覚になり、


咳が止まらなくなった。



一緒にいた父が「大丈夫か?」と


心配するほど激しく咳込んだ。



お茶を飲んで、どうにか落ち着いたが


とても苦しかった。



その頃はまだ、自分がアレルギー体質なんて


つゆほども疑わず、


アクの強いナスに当たったのだと思った。



その後も一度、ナスを食べていて


喉が痒くなったことがあるが、


それもまたナスのアクのせいだと思った。



しかし、トマトを調べていてわかった。


トマトはナス科の野菜なのだ。



あの喉の痒いような感覚と激しい咳は


口腔アレルギーの症状だったのである。


私のスギ花粉症はナスにも反応したのだ。



と言うわけで、


私は春には生のトマトは食べない。


ナスにも気をつける。



加熱調理すれば、たんぱく質の構造が変わり


アレルギー反応は起きないらしいので、


あまりナーバスにはならないけれど…



そもそも、夏にトマトジュースを飲もうが


プチトマトをデザート代わりに食べようが


特にアレルギー反応は起こらない。



たぶん、そんなに重いアレルギーではない。


スギ花粉が飛ぶ時期が要注意なのである。



ナスも、漬物とか焼きナスとかは大丈夫で、


揚げて油とドッキングするのが


私にはまずいような気がする。



他人事だった食物アレルギーは、


今や私にはそこそこ大きな問題である。



その食品に対する許容量が


自分の中にどれほどあるのかわからない。



ナッツなどの木の実によるアレルギーも


近年は多いようである。



アーモンド大好きな私も


いつか許容量を超えるかも知れない。



同じものを大量に食べないように


リスク分散型でいくしかないなぁ、と


ゆるく注意を払うこの頃である。