センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 月夜はぼんやり歩かせて


昨日、仕事を終えて駅を出た瞬間、


「!」…(⁠ ⁠・ั⁠﹏⁠・ั⁠) となった。



パンフレットを手渡され、


「あちらに本人がおりますので…」ときた。



いや、望んでないので。


勘弁して欲しい…



ニコニコと手を差し出され、


握手していただく私である。



いや、だから、望んでないってば…



選挙の度に繰り返されるこの光景。


この握手にはどんな意味があるんだろう?



「あちらに本人がおりますので…」


そこには軽く、ありがたく握手してもらえ、


というニュアンスが滲む。



ありがたくなんかない。


むしろ迷惑である。



昔、買い物に出かけた商店街で


候補者の軍団を見かけて


「しまった!」と心のなかで舌打ちした。



握手したくない。


初めて出会うその人と、


何の予備知識もないまま、握手したくない。



でも、引き返すには遅すぎた。


大人げない態度はとりたくなかったし。


なんだか、自分に負けた感があった。



それからは、候補者のお練りを見つけると


さっさと引き返すようになった。



今回は、不意打ちすぎた。



差し出された政策パンフレットには


あの方のお顔が…



私は貴方に何のうらみもございません。


でも、貴方の党が嫌なんです。


嫌なものは嫌なんです。



心の中でぶつぶつとつぶやきながら、


雲で霞んだ月を眺める。



もらった政策パンフレットを裏返すと


「政治は国民のもの」の文字が。



どの口が言う?


自虐ネタか?



握手なんかしてもらわなくても


私は私が選びたいものを選ぶので、


どうぞおかまいなく…



月夜はぼんやり歩かせて。