センチメンタル同盟

頭と身体の衰えが一致しない私の老いへの初めの一歩

 土鍋仕事


もう1年以上、炊飯器を使っていない。



色にこだわって探した、


お気に入りのネイビーブルーの炊飯器だが、


土鍋で炊いたご飯の魅力には敵わない。



慣れてしまえば、土鍋の方が早くて楽だ。


コロンとした丸い形状に惹かれて購入した、


萬古焼の土鍋は値段もお財布に優しかった。



長男と二人暮らしだから、三合炊きにしたが


実際に三合炊くと、炊き上がりが今ひとつ。



普段は二合炊くだけだから良いのだが、


次男が帰って来ると三合は必要になる。



五号炊きが欲しいなぁ、と思っていた。


煮物を炊くのにも良さそうだし。



陶器市で好みの土鍋を見つけたけれど、


結構な値段だったので


同じ物をネットショップで調べてみた。



公式ホームページでの定価が


陶器市で安くなった値段と同じだった。


まぁ、そんなもんである。



別のネットショップで安くなっていたので、


そこで注文することにした。


陶器市の値段より2千円ほど安かった。



土鍋は届いてみると、


思っていた以上に存在感があり、重い。



さて、どこに収納しようか。


とりあえずは、土鍋仕事をしなければ。



土鍋には吸水性があるので、


汚れやカビ、においの原因になる。



まずは使う前の手入れが必要である。


お粥を炊くとか、米の研ぎ汁で煮るとか


色々な方法があるようだが



この会社は小麦粉を溶いて煮る、


という方法を推奨している。



すいとんの粉があったので、


水で溶いて、土鍋に入れて煮た。



ついでにすいとんも作って昼ご飯にした。



どうしてすいとんの粉など買ったんだろう?


と、ふと考える。



子どもの頃、


「はだしのゲン」が連載されていて


毎週、読んでいた。



子どもには、なかなか重い話だし、


その絵も、子ども好みとは言い難い。



この話の中に


ある時、すいとんの話が出てきた。



箸を立てても倒れてしまう、すいとん。



戦時中の食料難で、具が少なくて


シャビシャビのすいとんしか食べられない。


そんなエピソードだったと思う。



それを読んでから、すいとんというものを


食べてみたいと思った。



父に、箸の立たないすいとんの話をすると、


どうして知っているのだと笑っていたっけ。



土鍋仕事のついでに作ったすいとんは、


具がたっぷりで、美味しかった。


お腹いっぱい食べられる幸せ。



箸の立たないすいとんの味を


覚えている人は少なくなっていく。



大きな土鍋で


ほかほかのご飯をたっぷり炊きたい。



そういう幸せに感謝して


そういう平和を守りたい、と


心から思うのである。