残念な仕事
秋はあちこちで陶器市が開かれる。
器好きな私には楽しい催し物だ。
陶器市にはお値打ち品が沢山並ぶが、
普段はちょっと手が出ない作家さんの
作品も並ぶ。
正規品もあるけれど、
いわゆるセカンド品も並ぶ。
焼き物は、どうしても鉄粉が落ちたり、
釉薬が流れたり、剥げたりすることがある。
普段使いの器としては、何の支障もないが
正規品としては売れない。
そういうものがアウトレット品として並ぶ。
かなりお値打ちなお値段になる。
ちょっとばかりお付き合いのあるお店で
そんなセカンド品を2点購入した。
多少の傷や汚れは承知の上である。
そんなに神経質な方ではない。
しかし、家に帰ってよくよく見ると、
その傷はちょっとのレベルではない。
いや、傷ではなく、
釉薬がきちんとかかっておらず、
剥げていたり、小さな穴のように見える。
これはまぁ、仕方ないと思ったのだが、
プロの作家さんの仕事にしては、
少々杜撰な、素人くさい失敗なのである。
窯に入れる前に、いくらでも修正できた。
そういう類いの失敗である。
正規品よりずっとお値打ちなのだけれど、
市販の品であれば、交換というお値段だ。
器そのものは気に入っているが、
その釉薬のいくつもの穴が気になる。
こうなったら、なんちゃって金継ぎだ。
陶器用の金の絵の具を気になる部分に乗せ、
1日乾かして、オーブンで焼く。
冷めたら、もう洗っても大丈夫である。
しかし、その絵の具を塗った後、
器を置いたテーブルには傷が付いていた。
その器の裏側を見ると、
本来、窯から出した後にやるべき、
ハマスリができていなかった。
粘土に含まれる、小さな小さな石粒が
こうして傷をつけることがないように
普通は裏側を陶芸用の砥石で擦るのだ。
信じられない。
こんなあたりまえのこともやってない。
私は、とても残念だった。
器に傷があったことそのものや、
テーブルに傷が付いたからではない。
なんというか、
プロとして作陶している人が
作った作品を売る、ということに対して
プロではなかったからである。
自分の仕事に誠実に向き合う人は
こんな杜撰な仕事はしない。
そもそも窯の火加減の失敗とか、
避けられない釉薬の失敗とか、
そういうものではない。
焼成する前に検品して
補うことが十分にできた失敗と、
商品として並べる前に
きちんと仕上げの仕事をしていれば
防ぐことのできた失敗である。
残念だなぁ。
その作家さんはとても気さくな良い人だが、
あまりにもアバウトなその仕事ぶりに
もう、この人の作品を買うことは
二度とないな、と思ったのである。
購入した器は、
なんちゃって金継ぎをして、ハマスリをして
私の作品になりつつある。
ちゃんと手入れして
大事に使うつもりである。

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