宿題の終わり ①
夫が突然亡くなって、
私には沢山の宿題が残された。
汚部屋の片付け、様々な手続き、
そして、1枚の書類。
私には永遠に縁のないと思われた書類。
絶対に背負うことなどないと思われた責任。
夫は小さな会社の役員だったから、
会社の借金の連帯保証人になっていた。
会社の社長と2人での連帯保証。
その額は、田舎で一般的な大きさの
中古住宅が買えるくらいの額だった。
連帯保証人にだけはなってはいけない。
それはよく言われることなのだが、
単なる保証人とは桁違いの責任の重さだ。
こんな形で自分に責任が回ってくるなんて
思いもしなかった。
私だけではない。
息子たちにもその責任は回る。
会社は存続するわけだし、
返済が滞っているわけでもない。
それでも、社長は
私たちに夫の責任を相続することを
希望した。
その金額を背負うのは、
社長と夫になっているが
別の借金が別の金融機関にあり、
それは他の役員2人が背負っていた。
その金額はもっと少なかった。
彼らはお金を借りるときに4人で話し合い、
会社を存続させて、その全ての責任を
4等分することにしていた。
私は様々なことを検討した。
他に借金はないかも、調査会社に依頼して
きちんと調べた。他にはなかった。
私が夫から受け取らなかった生活費は
そのまま普通預金に残されていた。
4等分した金額は、
残されていた金額と同じくらいだった。
それならば、いざというときには払える。
けれど、4等分にする、という約束は
口約束でしかない。
連帯保証人であることの書類はあるが、
それだけでは、いざというときには
社長とこちらの折半になってしまう。
まさか、夫が亡くなるとは思わず、
社長は焦っていた。
なんとか4等分を確実なものにしたい。
それは、私も同じだった。
夫が背負った責任なので、
いざというときには、4分の1は引き受ける。
それをきちんと書面にして、
連帯保証人からは外して欲しい。
それがこちらの希望だった。
相手方は喜んで、その案を持ち帰った。
それで丸く収まるはずだった。
しかし、相手方はその4等分の金額を
夫が亡くなった時点の残額ではなく、
借り入れたときの金額で割るべきだと言う。
つまり、こちらが聞いていた金額よりも
増額すると言うのである。
そしてまた、私が死んだら、
この約束を私の息子たちが守ってくれるのか
ということまで心配していた。
だから、法的に通るような書面を
プロに任せて作ろう、という話をしたのに。
私が死んでも、この場合と同じように
責任は相続される。
持ち家なのだから、相続放棄はしない。
土地は私の名義だし、
建物は長男との共有名義なのだ。
息子が責任から逃れることなどできない。
この辺りで、私も相手方に不信感を持つ。
会社は存続する。
彼らはそこから給料を貰い、
生活を保っていくのだ。
会社に籍を置かない私が
いくら夫の責任を相続するとは言え、
公平性に欠けないか?
しかも、会社の重要な案件であるのに
全くプロの手を借りようとしない。
書面を交わそう、という面談の日、
私は弁護士に連絡をして、
相談することにした。
私のいちばん大きな宿題の始まりだった。
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