ふっと通り抜ける風になる
シルバーの車を見ても普通の景色になった。
夫と同じ車種の車を見ても
ドキッとはしなくなった。
けれども
最近、時々見かける男性の後姿に
ドキッとする。
白髪混じりの短い髪。
首の下から少し丸めた背中。
夫と同じ年頃だろうか。
その疲れた背中にドキッとする。
前に回って確認したい衝動を抑え、
このままでいい、と思う。
バカみたいなんだけれど、
非科学的なんだけれど…
この世から消えた人たちは
こんなふうにこの世に紛れて
存在するのかも知れない、と思う。
だから、確認しなくていい。
このままでいい。
生きることも死ぬことも
ふっと通り抜ける一瞬の風。
私もいつか、そんな風になる。
姿形は失くなっても
この世のどこかに紛れて
ふっと通り抜けていく。
確認しなくても
この世のどこかに紛れてるかも知れない、と
誰かが思ってくれたなら
それはそれでいいではないか。
その一瞬の風が
温かくありますように
爽やかでありますように
私はまた、ぼちぼちと歩き続ける。
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